フィリップ・マーロウ始まりの物語
探偵小説の大家レイモンド・チャンドラーの処女長編作
冒頭シーンからチャンドラーの文体に酔わされる。細やかで想像を掻き立てる描写は丹念で、国も時代も違えどイメージを喚起してくれる。登場人物の所作・表情・服の皺までが今そこに思い浮かべることができる。ミステリとか探偵ものとかを超えて丹念で美しい文体は、アメリカ文学の到達点のひとつと言われるだけあって素晴らしい。ウィットでシュールでセクシーな小説は日本では生まれないだろうなと思う。
別色の姉妹
富豪の姉妹は別の術でフィリップ・マーロウを惑わせる。(惑わされたふりをしている)。危険とわかっていてもこういう女性たちに男は放っておけない。無邪気で奔放で大人びて子供じみて、女性の多面と多感を巧みに描く。マーロウはときに受け止め、すかし、攻める。探偵としての駆け引き、男としての駆け引き、2つの駆け引きが物語を進めていく。
格好いいとは格好悪いところにある
そう思わせる。マーロウは器用であしらいがうまいようで、不器用で振り回される。ときに彼自身が理性に逆らい行動する。主人公が自分の行動を読めないのだから、読者は振り回される。その振り回され方が気持ちがいい。もったいぶった感はなく、心地いい。
☆☆☆★★
0 件のコメント:
コメントを投稿